Jazzの車窓から

IziphoZam2004-09-24

Build An Ark / Peace With Every Step
 (2004, Kindred Spirits)

 初ブログでの初音楽紹介なので、現時点での今年のベストな一枚を。
昨今のクラブジャズシーンの中で活躍してるアーティストの中にはスピリチュアルジャズに魅了され影響を受けてきたものは少なくないでしょう。アシッドジャズムーヴメント期のアーティストは言うに及ばず、私が聴いてる最近の作品でいうと、The Cinematic Orchestra 「Theme De Yoyo」(Art Ensemble Of Chicago)、Detoroit Experiment 「Revelation」(Doug Carn)・「Space Odyssey」(Marcus Belgrave)、Sleep Walker 「The Voyage 」(With Pharoah Sanders)、Hu Vibrational 「Friends And Gardens (For Don Cherry)」・「Path Of Peace (For Yusef Lateef)」、Slicker 『We All Have A Plan』(With Phil Ranelin & Wendell Harrison) といったところでしょうか。おそらくもっとたくさんの作品があると思います。
 これらと同様にスピリチュアルジャズのアーティストへの敬意を表した作品がこのBuild An Arkによる『Peace With Every Step』。このプロジェクトはAmmon ContactCarlos NinoとPan-African Peoples Arkestraと共に活動していたDwight Tribleの出会いによって生まれ、9.11同時多発テロを契機として「平穏な世界」を提示すべく発足したそうです。参加メンバーを簡単にあげてみますと、Carlos Nino、Dwight Trible、The Pharoahsの創設者の一人でもありドラマー/パーカッショニストでもあるDelf Reklaw、Nimbusレーベルからのリリースで知られるピアニストNate Morgan、Tribeレーベルの創設者でもありトロンボーン奏者でもあるPhil Ranelin、Eastern Developmentsのリリース第1号のHu Vibrationalの中核で民族楽器を自在に操るドラマー/パーカッショニストAdam Rudolph、最近ファーストアルバムをリリースしたシンガーソングライターDamon Aaron、フォトグラファーのB+など、これは今のLAのアンダーグラウンドコミュニティーの幅広いコネクションを表していると同時に、私にとってこれでもかというくらいのとても豪華なメンツです。
 昨今のこれらの作品と大きく異なる点はスピリチュアルジャズの最も重要である精神性をしっかりと受け継ぎ、それを彼らの方法論と同様に体現化しているところでしょう。Michael WhiteやPhil Ranelin、Pharoah Sanders、Stanley Cowell、Gary Bartz、Nate Morganのカバー曲・インスパイア曲からも彼らの先人たちへの奥深い愛情が汲み取れます。それ以上に、巧みな打楽器演奏やハンドクラップによってアフロセントリックなビートを刻み、バンブーフルートやフェンダーローズによる情緒的なメロディー、そしてDwight Tribleと男女コーラスによる母なる大地の声によって私達が本来もつオーガニックな感情を引き出してくれます。
何か原点に帰りたいとき、泣きそうなときに助けてくれる大切な一枚です。

【関連サイト】
http://www.rushhour.nl/distribution/o_kindred.html
http://www.brandyflower.com/todo.html