HipHopの車窓から

IziphoZam2004-10-10

Thaione Davis / Situation Renaissance
 (2004, Birthwrite Records)

 タイトル通りようやく届きましたこのCD。将来有望な弱冠26歳のシカゴのMC、Thomas MartinによるThaione DavisのデビューEP『Situation Renaissance』。シカゴでもかなりマイナー(CD-Rでのリリース中心)のレーベルのためかマスタリングにいまひとつのところがありますが、とにかくトラックとラップが新人とは思えないほどクオリティーが高いんです。
 Thaione DavisことThomas MartinはMC/DJ/プロデューサーで、今まで数々のブレイクダンスコンペティションやMCバトルに参加し、ヒップホップの音楽自体は当然のこと、学生時代にDJやオリジナル曲を含んだミックステープの配給など、文化としてのヒップホップに没頭してきたそうです。そうした活動の集大成として2001年の夏に貯金してアムステルダム、パリ、ブリュッセル、ロンドンとライヴハウスやクラブ、ストリートでライブを行ったことが功を奏し、ドイツ/ハンブルグのヒップホップレーベルHong Kong Recordingから、当時500枚程度のCD-Rしか出回ってなかったThaione名義のEP『Progress』が正式にリリースされました。そしてインストとオルタナティヴテイクを加えたLP(同タイトル)も2002年にリリースするに至ったそうです。そして今作『Situation Renaissance』は後にリリースされるLP『Confidential』のデモンストレーション的なミニアルバムといったところです。彼のインタビューによるとPeven EverettJurassic 5とのコラボレートの計画もあるそうです。
 さて、音のほうはというと大まかに言えばジャジーヒップホップですね。とはいっても最近増えてきてる生音中心のトラックではなく、ジャズ/ソウル/ファンク/ゴスペルといったブラックミュージックの影響が顕著に現れてる作品ではないかと思います。カット&ペーストテンポのいいキーボードのメロディー/リズムにThaioneの気持ちいいフロウのラップが乗っかった、フロアでかかったら間違いなく盛り上がりそうな傑作「The Long」[M-3]や、サンプリング/エフェクトしたジャズギターをループした哀愁漂うブルージーなトラックにThaioneとゲストMCのLomos Maradのラップが交互に連鎖する「Key Of Life(feat. Lomos Marad」[M-8]は彼がなぜヨーロッパで成功したかうなずかせてくれます。それだけでなく、レゲエ/ダブを主体とした「One Year After The Renaissance(Intro)」[M-1]や「Fieldsongs」[M-5]などユニークなトラックもあったりします。日本にたくさん入荷するかは不明ですが、Thaione Davisとしてのフルアルバムがとても楽しみです。
 それと、このBirthwriteというレーベルですが他にも将来が楽しみなアーティストがたくさんいるので是非ともチェックしてみてください。

【関連サイト】
http://www.birthwriterecords.com/bio_thaiOne.htm