Breakbeatsの車窓から

IziphoZam2004-10-18

Cosiner / Bittersuites
 (2004, Beautiful Angry Music)

 だいぶ前から購入しようと思ってたんですが、その度に売切れ/入荷待ちでなかなか手に入れられなかったんですが、最近LPがリリースされてCDのほうも多少出回るようになってようやく入手することができました。ブレイクビーツ/ヒップホップとして取りあげますけど、近年のジャズを基調としたインストヒップホップといわれるものの中でもかなりクオリティーが高い一枚です。
 CosinerはShing02『400』でも何曲かトラックを手掛けたり、ツアーに帯同していたベイエリアを拠点にする日本人プロデューサー兼アーティスト。今年に入ってからは西海岸を拠点にし、ますますヒップホップに傾倒しつつあるエレクトロニカ/ブレイクビーツアーティスト=Omidとジョイントシングルを出したり、同じく西海岸のMC=Spexの新譜にトラックを提供したりしていましたね。
 そしてようやく届けられた彼の1stアルバム『Bittersuites』は全曲自身によるプロデュースで、ブレイクビーツ/ヒップホップのビートを基調としながらもジャズの空気が満ち溢れた作品になっています。哀愁漂うギターのループとDJ Shadowばりのドラミングが映える「Breakthru」[M-3]、Joe Henderson「Earth」使いのシタール音がサイケな「Do Without」[M-8]、ドラマチックなピアノのループに情景を膨らますようなフルートや、神秘的な鈴の音などのパーカッションを入れたとてもスピリチュアルな「For The Sake Of Somethin' Else」[M-12]、そしてアルバムのハイライト的一曲「Thereafter」[M-13]は、叙情的なピアノのループと疾走するドラムが聴く者の心を揺らがすようなとても感動的な一曲。かすかに聞こえる自然の音疾走するも個人的に気持ちよかったです。Shing02『400』もそうでしたが、やはりこの人こういった情緒的なトラックを作るのがうまいですね。
 全体的に素晴らしいんですが、個人的に一つ残念なのはこういった自主レーベルとかにありがちなミキシング/マスタリングの精度ですかね。Madlibの諸作品のように、それがそのアーティストの色となっている作品ならわかるのですが、今作品みたいな生音のジャズネタをキレイに構築した作品とかはそうするともったいない気がするので、もう少しそこら辺にこだわってほしかったかなと。いい塩梅に。