Future Folkの車窓から

IziphoZam2004-10-27

Trashmonk / Mona Lisa Overdrive
 (1999, Creation)

 元The Dream AcademyのNick Laird=Clowesの新しいプロジェクトTrashmonkが、Creationから1999年に発表した1stアルバム。2001年にはジャケットを変更し新たに2曲追加され、アランマッギーが改めて新設したレーベルPoptonesから再発売されたアルバムと基本的に同じ内容です。よく中古CDショップで投売りされてますが、全くそんな印象はない、独特のサウンドを持った未来のフォークプロジェクトTrashmonk。
 当時のネオアコブームとは一線を画すアコースティックサウンドを持っていたThe Dream AcademyのフロントマンであったNick Laird=Clowesは、T-RexPink FloydBrian Wilsonなどとも共作したこともあり、また真相は定かではないですが、Creationのバイオグラフィーによるとジョン・レノンオノ・ヨーコ夫妻に一時養子として迎えられたこともあるらしいです。そんな彼はかねてからアジア文化に興味があり、ドラッグに蝕まれた心と体を変えるためにチベットの僧侶に会いに行ったことがTrashmonkを生み出すことになったそうです。インドのラサにある修道院で住み込みの生活を経験し、インドの民族音楽などに傾倒していったそうな。そしてソロデビューのきっかけでもあるDodgyの前座ライヴで、Creationの総帥アランマッギーに見初められたニックは彼にこう言われたそうです。「オレはヒットアルバムは求めていない。君ひとりで、好きなようにやってくれればいい」。さすがアランマッギー。あんたやっぱ最高ですわ。契約を済ましたニックは、インドでの生活や旅行で録りためていたその土地土地の音をサンプラーに録り込み、様々な加工をしていった世界に二つとないサウンドを夜な夜なベッドルームで完成させていきました。そしてPrimal Scream『Vanishing Point』にも参加していた、彼が敬愛するインド音楽の代表的楽器タブラ奏者のPandit Dineshを招き、ついに『Mona Lisa Overdrive』が世に放たれました。
 寂しげなアコースティックギターの旋律に、エフェクト加工された浮遊するキーボード音の洪水が別世界へと引き込む「Girl I Used 2 Know」[M-1]や、サイケデリックなエコーが映えるタブラとエレクトリックバイオリンに、彼の叙情的なメロディを奏でるギターのサビがかっこよすぎる「All Change」[M-6]は唯一無二なフューチャーフォーク。彼のSSWの腕を見せつけるアルバムのハイライト的曲である「Dying Day」[M-10]は、内省的になりやすく夢世界に逃げてしまうことはドラッグに蝕まれていたせいではなく、結局は自分の意思であったこと、またそれは自分の好みでそんな世界が今も好きである彼の内面が見え隠れするような曲。
 早すぎたフューチャーフォーク。フォークトロニカなんかが好きな人は気に入るんではないでしょうか。また今年も冬になると聴いてしまうんだろうなあ。。

【関連サイト】
http://www.poptones.co.uk/bands/trashmonk.shtml