Breakbeatsの車窓から


Malcom Kipe / Breakspiracy Theories
 (2005, Merck)

 μ-ziq主宰のPlanet-MuからはNautilis名義でもリリースしている、テキサス州オースティンをベースに活動するプロデューサーMalcom Kipeのデビューアルバム。
 Merckのサイトにも彼のサイトにもバイオグラフィーが全然載っていなかったので、詳細はわからりませんが、Malcom Kipeという名はBad/Abnormalという意の‘Mal’とComputer Output Microfilmの略の‘Com’、Stealという意の‘Kipe’から作られたものらしく、主にDJ PremierからRamsey Lewisといったアーティストたちに影響を受けたとか。また、上記の名義以外にもFelix HoenikkerというDJ/ヴィジュアル・プロジェクト名義も持つみたいです。個人的な好みでMerckはあまり聴いていなかったのですが、このMalcom KipeはPrefuse 73以降のエレクトロニカ・ヒップホップを多々輩出しているレーベルに所属しているとは思えない異色のビート・クリエイター。政治的な刺激からくるものを音として表現しているみたいなのですが、そんなコンセプトを思わせないジャジーな風合いの風雅な生音サンプルを中心にしたインスト・ヒップホップを展開していて、またMerck色のエレクトロニカ・ヒップホップやExpress Risingのような優美な空気感を持ち合わせたアブストラクト・ヒップホップ、バグパイプ・サンプルを用いた民族的なトラックなど、一言では言い表せないくらいの幅広い音楽性を見せ付けてくれています。19曲と曲数が多いのでアルバムとしては中弛みしてしまうとこもありますが、クオリティの高い曲揃いのアルバムです。

【関連サイト&試聴】
http://www.malcomkipe.com
http://www.m3rck.net/html/discog/034.html