Nu Jazzの車窓から

IziphoZam2004-11-01

Freeform Arkestra / Metamorphosis
 (2003, Straight Ahead Recordings)

 良質なクラブジャズを輩出するスイスのレーベルから2003にリリースされたFreeform Arkestraのフルアルバム『Metamorphosis』。昨年タワーレコードで試聴して勢いで購入したもの当時あまり聴いてなかったんですが、最近久々に聴いてみたらめちゃんこかっちょよく聴こえました。やっぱ耳っていうのはいろいろ聴いてるとツボも変わってくるんですね。
 Freeform Arkestraはスイスのチューリッヒをベースにプロデューサー/DJとして活動しているNico CanzoniereとDario De Nicolaを中心にした19人編成のフューチャーフリージャズバンドで、ヨーロッパのフリージャズで著名なサックス奏者Werner Ludiやダブルベース奏者Derek Dievergeltなどを迎えたコレクティヴだそうです。確かにサックスやピアノ、トロンボーン、ヴァイオリンなどの生楽器やコンガやジェンベといった民族楽器を多用したバンド形態なんですが、そこにクラブ的なビートを加え、更に電子音などによってより不可思議な匂いを漂わせるフリージャズを展開しています。まあ踊ろうと思えば踊れます。近年なってブロークンビーツが生まれましたが、このバンドはまさにその言葉が似合うビート/ドラムを奏でています。全般的にそういった曲ぞろいなんですが、私の一番のおすすめは「Astro Ray Way」[M-5]。不可思議だけどリズムがとても気持ちいいドラムにキレイな音色の中にあるSun Ra的宇宙ビームエレクトリックピアノと、これでもかというくらいのスペーシーなシンセとギュンギュンいうエレキギターが、もういつの間にか聴く者を宇宙に連れて行っていまいます。 
 彼らの音楽からしてきっとSun Raが好きなんだろうなあって思ってたらCDケースの内側にインスパイアされたアーティストの名前が。Sun Ra and His Arkestra Members、AEOC、Don CherryElvin JonesCharles Mingus、David Durrahなどなど。なるほどです。音が想像しにくい場合はこれらのアーティストがクラブ的アプローチをした音を想像してみてください。
 今よく考えてみたんですけど、私が当時、試聴したらかっこよく聴こえたけどいざ買ってアルバム通して聴いたら...な理由が何となくわかりました。移動中など何か他のことに集中してるときとかは普通なんですが、きっとこの作品にのみ集中して聴くとすごく体力消耗した気がするからです。。それはもちろん悪い意味ではなく、宇宙のように奥深い哲学的音楽だからとでも申しましょうか。ってすんません、よくわからないですよね。
 例えば、大体の音楽って少なからず展開とかってあると思うんです。わかり易くいうとAメロ→Bメロ→サビっていった感じで。で、音楽を聴いている人ならば何となくわかってもらえると思うんですが、無意識的に、展開が変わるのがわかったり次にこういう展開を待ってたりすると思うんです。ワクワクするような期待感というか。それがこういった音楽の場合は一般的に見られるオーソドックスな展開は皆無で、「まったく先が読めない!」「メロディーもようわからん!」「でもなんかゾクゾクして楽しい!」というように、この手の音楽はそういった期待と不安が入り混じったスリルが魅力的でかっこよさを感じてしまうんですよね。同様にその宇宙回帰的なサウンドもツボなんでしょうけど、フリー/即興というスタイルから見ればやはりその者以外は成し得ることができない、唯一無二という偶然性と必然性がぶつかり合った音楽的美学を感じるからってのもあるんでしょうかね。もしくは人間の奥底に眠るなにかが自然と感じてしまってるのかもしれません。
 なんか今回は偉そうな音楽論評を書いてしまいましたが、あんまバッシングしないでください(笑)。あくまで未熟者の感想ですので。。

【関連サイト】
http://www.straightaheadrec.com/