Jazzの車窓から

IziphoZam2004-11-15

Sun Ra / Cosmos
 (1976, Cobra)
 (2003, P-Vine)

 1976年夏、Sun RaとArkestraがMontreux Jazz Festivalを始めとしたヨーロッパツアーに出向いた際に、滞在中のパリで録音された『Cosmos』。オリジナルリリースは当時、まだ新興レーベルであったフランスのCobraから。
 土星からやってきたと自ら公言する、偉大な鍵盤楽器奏者Sun Ra (サン・ラー) の作品を始めて聴いたのは20分以上に及ぶ超大作「Space Is The Place」でした。以前からあらゆるカバー等で名前やその音楽性は耳にしていたものの、まったくサン・ラーを知らない私にとってはとてつもなく衝撃的な作品でした。スペーシーなムーグとオルガン、ホーンセクションとベースがすごいかっこいい曲だなと思っていたら、それらが微妙に変化はつけられながら‘♪Space Is The Place〜’とスキャットされるボーカルが流れ、徐々にオルガンからサックスやドラムといった様々な楽器のフリーインプロゼーションが増していき、同様にフリーキーで呪術的に吹かれていくサックスやボーカルにとまどいました。。「何ですかこれ!」って感じに。以降、カバーされていたりする曲以外は敬遠しがちだったんですが、このアルバムをあるとき試聴してみたら私が抱いてしまっていたイメージを払拭させました。
 それもその通りで、いろんなサイトを見てみると『Cosmos』は数多くあるサン・ラーの作品の中でも比較的アヴァンギャルドさが薄く、聴きやすい作品らしいです。ジャケットの美しさ同様に、音もとてもコズミックでサン・ラーが演奏しているロックシコード*1の音色が強調されていてとても美しいアルバムとなっています。各楽器のインプロゼーションもある程度まとまっているせいか曲もちょうどいい5〜7分の構成の曲がほとんどです。そこには、宇宙と交信しているかのようなオルガンの響きはなく、独特の響きを持ったロックシコードによって、むしろそれを越えて宇宙と一体化してしまった、土星出身宇宙案内人サン・ラーによるスピリチュアルな空想宇宙旅行サウンドトラック。きっとサン・ラーをこの盤で初めて知ったら好きになってしまうんだろうなぁ。そのくらいこのアルバムは大好きです。

【試聴】
♪Moonship Journey[M-5]
http://www.voxmusicweb.com/record_new/1068.html

*1:60年代後半に開発された見た目はシンプルなエレクトリックオルガンで、ハープシコード特有の爪で弦をはじくような音を電気的に変調させて独特の浮遊感のある音色が作り出されるエレクトリック・ハープシコード