Georgia Anne Muldrow / Worthnothings
 (2006, Stones Throw)

 PPPのアルバムに参加していた、LAを拠点とする弱冠22歳の女性シンガー/ソングライターのデビュー作のStones Throw再発盤。
 いやー待ったかいがありました。このアルバム自体は2004年か2005年にリリースされていたのですが、なかなか手に入るとこが見つからなかったので最高に嬉しいです。彼女について知ったのはDwight Trible & The Life Force TrioとPPPのアルバムで、ずば抜けたトラックメイキングと歌声に魅了されて誰だろうと思っていたのですが、彼女についての記述を見ててみると「彼女の父はEddie Harrisに曲を提供したことがあり、また母はPharoah Sandersと共演経験をもつ」らしく、歌やソングライティングのみならず絵も描くみたいです(ジャケットも彼女作)。
 このデビュー作もそのトラックに見られたような、ポエムのような伸びやかな独特の歌声と自己演出によるコーラス・ワーク、そしてソウル・シンガーとは思えぬざらついた、埃の被ったような質感を持ったトラックメイキングが一際光っていて、これからがすごい楽しみになってくるEP。今年一枚フルアルバムをリリース予定だとか。

【試聴】
http://www.cdbaby.com/cd/georgia
http://www.undergroundhiphop.com/store/detail.asp?UPC=STH2135CD
http://www.myspace.com/theworthnothingskrew


Rufus Harley / Sustain
 (2006, Isma'a)

 Sonny RollinsやSun Raらと活動し、コルトレーンに強く影響を受けた演奏スタイルでスピリチュアル・ジャズ/ジャズ・ファンクに人気を得ていた、バグパイプ奏者Rufus Harleyの15年ぶりとなる新録アルバム。
 third_stoneさんが以前紹介していたので気になっていたとのですが大当たりです、この人。バグパイプというとスコットランド/民族楽器というイメージが強くて全く興味なしでしたが、サックスにも似た、感情を揺さぶるような響きや演奏者の魂が直に込められたようなメロディーなど、独特の音色を奏でるこの楽器の中毒性にやられてしまいました。もちろん本アルバムの内容も同様に、バグパイプ、ペット、ピアノ/ハモンド・オルガン、ドラム、パーカッションから生み出される、ブラックジャズ風のグルーヴが最高です。疾走感溢れるアレンジがカッコ良過ぎるコルトレーン・カバー「A Love Supreme」[M-1]がやはりズバ抜けているのですが、アブストラクトな雰囲気を醸し出した「The Constitution」[M-2」が個人的に好み。クラブ・ジャズ・ファンにも是非聴いてもらいたい一枚です。

【試聴】
http://www.soulseduction.com/common/item_detail.php?ItemID=156019


Birdy Nam Nam / Birdy Nam Nam
 (2006, KIF Music/Uncivilized World)

 DMC Worldチーム部門チャンピオンに輝いたフランスの4人組ターンテーブリスト・グループ、Birdy Nam Namの1stアルバム。
 新進気鋭なRicci RuckerやMike Booといったアーティストの活発な活動によって、最近再び元気が出てきたターンテーブリスト業界からまた良盤が出てました。4人ということでビート、ベース、ウワモノたちを生演奏のごとくスクラッチで曲を構成していて、アブストラクト/ダウンテンポ〜エレクトロ〜ドラムンベース〜ブロークンビーツと幅広く、ドープでインダストリアルな空気を持ったトラックを中心に構築しながらも、ジャズやロックのサンプルを用いることによってポップにも仕上げています。4,5,6,7,14曲目あたりがオススメです。D-StylesとMike Booがゲストで参加。

【関連サイト】
http://www.birdynamnam.com/
http://myspace.com/birdynamnam
【試聴】
http://www.cisco-records.co.jp/cgi/title/techno/detail_154622.php


Marc Mac Presents Visioneers / Dirty Old Hip Hop
 (2006, BBE)

 ご存知4 HeroのMarc Macが、昨年LPのみでリリースしたChess/Cadet音源再構築集『How About A Game Of Chess』に続いて正式なファースト・ソロ・アルバムをリリース。
 上述の作品で、全編的にカバーでありながらも4 Heroでは聴けなかった、ヒップホップを機軸としたブレイクビーツ/ブロークンビーツを披露していましたが、本作も同様なサウンドでジャズ、ソウル、ブラジルの要素がふんだんに詰まったメロウ・ブレイクス。ベテラン“4 HeroのMarc Mac”ですから、全て生演奏で構成されているかと思わせるベース、ギター、アコピ/エレピ、ドラム・ブレイクスによるトラックメイキングは、まさに洗練の極みというべきクオリティです。そして大半の曲となっている、ヒップホップ・大ネタ/大名曲の忠実なカバーがこれまた素晴らしいです。曲目を見れば想像つきますが、Masterdon Committee「Funkbox」、Isaac Hayes「Ike's Mood I」、The Pharcyde「Runnin'」、Nas「The World Is Yours」など。久々に良いインスト・ブレイクビーツ作品に出会った気がします。お馴染みCapitol A、Moonstarrプロデュースでデビュー予定のVoiceらがゲスト参加。

【試聴】
http://www.omniverserecords.com/visionpop.html


Lefties Soul Connection / Hutspot
 (2006, Melting Pot Music)

 レーベルコンピが大好評だったドイツのMelting Potから、誰もが知るDJ Shadowの名曲「Organ Donor」カバーの限定7インチシングルが話題の、オランダはアムステルダムを拠点とするバンドLefties Soul Connectionがデビューアルバムをリリース。
 ファンク・ヴァイナル・ユーザーの間では、DaptoneやTruth & Soulに続く新興ファンク・レーベルとして注目を集めつつある、独Melting Potからついにアーティスト単独のオリジナルCDアルバムがリリースです。購入はしてないものの、ネットでよく話題となっていたので彼らのフル・アルバムを楽しみにしていたのですが、期待通りヤバイです。ハモンド・オルガン、ギター、ベース、ドラムとシンプルな4人編成による現在進行形ディープ・ファンクで、表情豊かなオルガンと爆裂するドラムが印象的。中でもやはりDJ Shadowの名曲「Organ Donor(Extended Overhaulの方)」カバーが秀逸で、あのワウワウ・ギターやオルガン・ループ、ドラム・ブレイクを忠実に再現。スクラッチの代わりにはカウベルを使用してるとか。グルーヴィー・オルガン・ファンク!

【試聴】
http://diskunion.net/black/detail.php?goods_id=54C060214101
http://www.inpartmaint.com/nebula/nebula-releases.html#NBIP5029


Nicole Willis And The Soul Investigators / Keep Reachin' Up
 (2006, Timmions)

 昨年Gille Peterson「Worldwide Award 2005」の“Track Of The Year”にノミネートされたことで一躍脚光を浴びることとなった、北欧発ディープ・ファンク/ノーザン・ソウル・バンド=Nicole Willis And The Soul Investigatorsのデビュー・アルバム。
 いやーついにリリースされましたね。新星というと、個人的にヒップホップ勢がやはり一番気になっているのですが、本作も今年期待されている注目作の一つではないでしょうか。シングル・リリースの時点でNicole Willisという人は全く知らなかったのですが、アシッドジャズ旺盛の頃にひそかに人気を集めたRepercussionsの元ヴォーカリスト、Jimi Tenorの妻というブランドを持ちったソロ・アルバムも内容的に評価を得ていたらしく、当バンドはフィンランドのディープ・ファンク・バンドと組んだプロジェクトであるとか。しかもThe Five Corners QuintetのJukka Eskola、Teppo Makynen(Teddy Rok Seven)、QuintessenceのAki Haaralaらもメンバーに名を連ねているという、もう想像しただけでお腹いっぱいになりそうなバンド。となるとまた北欧独特の空気を持ったクラブ・ジャズ?みたいに思ってしまいますが、ノーザン・ソウル・マナーを忠実に守った、60年代後半の香りを再現した現在進行形ファンク。60〜70年代へトリップしてしまいそうなストリングス、ついつい腰を動かしてしまいたくなる太いベースラインにアップテンポなドラム、心の旋律を操るようなギター、ホーンが作り出すメロディーは現行のダンスミュージック・ファンを回顧的な気持ちにさせてしまうような趣きがあります。これは当分ヘビロテになりそうです。

【試聴】
http://www.timmion.com/recordshop.aspx
http://www.bls-act.co.jp/music/detail.php?wpid=3142<id=25


Gil Scott-Heren/Brian Jackson / Winter In America
 (1974, Strata-East)
 (1998, Rumal-Gia)

 ポエトリーな歌唱で知られる詩人Gil Scott-HerenとピアニストBrian Jacksonとのコンビで、Strata-Eastに唯一残した大名盤。
 昨年リイシューもので購入した中で最も心射抜かれた作品。今頃コレ聴いたのかよって感じですが、いろんなとこでそのようにこのアルバムが語り継がれている理由がよくわかりました。こんなにも心に残る名盤に出会ったのは久々でした。実に素晴らしいです。歌とは多少言い難い、表情に変化を付けた熱情的なポエトリー・ヴォーカルはもちろん、ただでさえたまらないフェンダー・ローズやアコピのメロディーが描く情景がもう言葉に出来ないくらい美しすぎます。ジャズ・ファンク系リスナーからは、ファンキーな歌い口調とアップテンポな曲調から「The Bottle」[M-5]が大人気のようですが、私的にはもうゆったりしたピアノの旋律に心動かされる「Rivers of My Fathers」[M-2]と、フェンダー・ローズとフルートの美しすぎるメロディーが疎遠な父への想いを心全体に巡らせるような「Your Daddy Loves You」[M-7]がたまらなく大好きです。大切な人やモノへの想いを募らせたときについこの曲を聴いてしまいます。その他の曲を合わせても、まさしく一家に一枚の大名盤だなと思わせる作品。もう手放せません。ライナーの裏側の、あらゆる写真を切り取って作られた絵もとても印象的で素晴らしいので、手に入れたらそちらも是非見てみてください。

【試聴】
http://www.cduniverse.com/search/xx/music/pid/1018982/a/Winter+In+America.htm