Basic Vocab / The General Dynamic
 (2006, AVX/Traffic)

 マイアミを拠点とする、T.I.やCee-Lo、Common、Anthony Hamiltonなどを手掛けたプロデューサーTony GalvinとMCのJL Sorell、Mental Growthからなるヒップホップ・グループBasic Vocabのデビューアルバム。
 Counterflowからリリースしたデビューシングルからだいぶ経ちましたがようやくフルアルバムがリリースされたました。いろんなサイトでATCQLittle Brotherといったグループ、Pete RockJay Deeを掛け合わせたようなサウンドと喩えられていましたが、それも納得できる内容で、ブーストさせたベースやエレピ、キーボードのループを多用したソウルフルな空気感、2MCの空気に馴染むような掛け合いフロウが最高に心地良いです。ゲストにCounterflowでお馴染みのプロデューサーSquare、MCのDave Ghetto、Dynasが参加。アマゾンでは6/19発売予定となっているみたいですが、絶賛発売中です。

【試聴】
http://www.okayplayer.com/nowhearthis/nht_basicvocab.html
http://www.undergroundhiphop.com/store/detail.asp?UPC=AVX1501CD


Cro-magnon / Cro-magnon
 (2006, NMNL/Jazzy Sport)

 元Loop Junktionの三人から成る人力ブレイクビーツ/ディスコ・バンドCro-magnonの1stフル・アルバム。
 先行12インチやJazzy Sportのmyspaceでの試聴で本作を楽しみにはしていましたが、ここまで素晴らしいとは思ってませんでした。もう「日本人だからそれほど、、」という先入観はあまり良くありませんね。Loop Junktion自体は某深夜番組でくらいでしか聴いたことないのですが、日本人の生バンドにしてこのグルーヴはすごいなと思いました。ジャズ/ソウル系のヒップホップ・バンドは数多くいますが、当バンドはそのクオリティはもちろんジャズ、ソウル/ファンク、ディスコ、ダブを絶妙に消化した独自のサウンドは、Gilles Petersonも認めたようにまさにオリジナルなジャパニーズ・スタイルではないかなと思います。心地よい銀河系漆黒グルーヴ。

【試聴】
http://www.towerrecords.co.jp/sitemap/CSfCardMain.jsp?GOODS_NO=953609&GOODS_SORT_CD=101


The Prime Element / Alborada
 (1976, Trova)
 (2006, Kindred Spirits)

 リリースする作品が全て新鋭かつハズレなしと、今や世界的に絶対的な信頼を得ることでお馴染みのオランダのKindred Spiritsが新たに設けた、スピリチュアル・ジャズ発掘レーベルFree Spiritsからの第一弾再発作品。世界初CD化。
 もう世はオランダ発信という時代なのでしょうか。過去のKindred Spiritsからのリリース作品は言うに及ばず、公式HPのラジオでの良質なジャズやブラジル、ラテンといった音楽紹介からこの再発シリーズを楽しみにしてましたが、んーやばいですね。Timeless音源コンピは収録曲からすると、現クラブジャズ・ファンをメイン・ターゲットにした序章的な感じでしたが、これは本当久々ガツンとやられました。なんせ噂によるとあの若杉実さんも知らなかったというブツですし。まさにニュー・ディスカバリー以前紹介したAlverto Favero同様にオーケストレーションを多用したスピリチュアル・ジャズなのですが、叙情的でアブストラクトな感があった同作品とは一味違ってフロアキラーになりそうな楽曲揃い。ストリングス・アレンジがとてつもなくスリリングな、ブラジリアンな雰囲気を持った「Southamelodic」[M-1]、スキャットなのかボーカルなのか分からなくなるほどの存在感を持った歌声と、これでもかとグルーヴを描く、幾重にも連なる鍵盤楽器(アコピ、ローズ、ハモンド、シンセ、ムーグ)とベース、疾走するドラムが最強過ぎる「Lola」[M-4]を聴いたらもう即死です。他にもソフトロック調の和みトラックもあってアルバムとしての完成度も素晴らしいかと思います。Kindred SpiritsとP-Vineに感謝さまさまです。

【試聴】
http://www.rushhour.nl/distribution/kindred/ksre1cd.html


The RH Factor / Distractions
 (2006, Verve)

 ジャズ・トランペット奏者Roy Hargroveのソウル・ユニットThe RH Factorの約1年半ぶりとなるアルバム。
 どうもお久しぶりです。んー実に最高すぎる。最高すぎます、このアルバム。間違いなく今のとこのヘビロテNo.1。前作ではErykah BaduQ-TipAnthony Hamilton、Common、Meshell Ndegeocello、James Poyserといった超ビッグなソウル・アーティストを招いて、アルバムとしてもかなり良かったのですが、今作はメンバーからJames Poyserが抜けゲストもD'Angeloというだけですが、誰もが聴いてもそれを上回る内容。コンセプトがまとまっていなかったの多少なりともスカスカ感が感じられた前作に比べよりグルーヴ感が増し、ドラム演奏もよりソウル/ヒップホップを意識した音を鳴らしていて、The Soulquarians好きにはきっとたまらないと思われる音。春をイメージさせるような軽やかなホーンの音色にアップテンポリズミカルなドラムがのった「Crazy Race」[M-2]、もろネオソウル/ヒップホップ的な「Hold On」[M-8]、D'Angelo参加/プロデュースの「Bullshit」[M-9]はクラブジャズ〜ヒップホップ・ファンにはドツボだと思われます。いろんなとこでプッシュされてるので手が出しにくいかと思いますが、これはホント2006年末に名盤として挙げられる一枚だと思います。

【試聴】
http://www.vervemusicgroup.com/product.aspx?pid=11512&ob=bf&src=lb

Pirahnahead / Solid: A Moment In The Mind Of Pirahnahead
 (2006, Mahogani Music)

 昨年のMoodymannの来日公演でも素晴らしい演奏を見せてくれた、Mahogani Musicが誇るソウルネス=Pirahnaheadのデビューアルバムがようやくリリース。
 昨年末から本作がリリースされていると情報が出回っていたものの、どこも何故か手に入らない状態でしたがようやく取り扱う店が出てきてくれました。昨年夏のMoodymannの日本公演で個人的に一番心に残ったのが彼だったので、このアルバムは本当に“待望”って感じで最高に嬉しいです。ロックやブルース、ジャズからも影響を受けたという生演奏主体による温もりのあるトラックは、Mahogani Music/デトロイトハウス勢の中でもソウル色が最も強いといえるのではないでしょうか。心地良いメロウ・グルーヴ/ハウスといった感じ。「Love」が収録されていないのがちょっと残念。

【関連サイト】
http://www.womenonwax.com/pirahnahead.htm
【試聴】
http://www.cisco-records.co.jp/cgi/title/house/detail_153016.php


Natural Self / Let Peace Be The Ruler
 (2006, Breakin' Bread)

 過去にTru ThoughtsからシングルをリリースしていたDJ/プロデューサーのKeno 1ことNatural Selfが、サウス・ロンドンの要注目新興レーベルBreakin' Breadからリリースしたデビューアルバム。
 久々のブレイクビーツ新人。ブレイクビーツではないかも。Natural Selfは10年以上のDJキャリアを持つ人物で、2001年にTru Thoughtsからのシングルでアーティスト・デビューし、Mr Scruff, John Peel, Giles Peterson, Jon Stapleton, Quanticに早くから注目されていたみたいです。彼がそうなるのも何となく分かるサウンドで、ヒップホップ、ファンク、ジャズ、ブラジル、アフロなどを含んだ上記レーベルお得意のクロスオーバーなブレイクビーツ系なのですが、多重パーカッション、ホーン、図太いドラムを中心にした、生演奏かと思えるくらいにそれらの音楽の空気に重点を置いたアブストラクトなヒップホップ/ジャズ。カッコ良いです。Alice Russellが参加。

【関連サイト】
http://www.tru-thoughts.co.uk/?page=artists/artist.html&aid=2
【試聴】
http://www.breakinbread.org/BNB023.htm


Tanya Morgan / Moonlighting
 (2006, ABB Soul)

 Little BrotherやForeign Exchangeのアルバムに参加していたことで知られる、MC/ProducerのVon Pea、IlwylのDonwill、IlyasからなるグループTanya Morganのデビューアルバム。
 Kanye West9th Wonder以降、ソウル・サンプリングをメインとしたヒップホップが蔓延してましたが、久々にヒットしそうな新人登場です。彼らのようにソウル・ネタをふんだんに用いて、回顧的なヒップホップを奏でようとしているアーティストが最近たくさんいましたが、このTanya Morganはそのような流行ノリを蹴散らすクオリティではないかと思います。Little Brotherにも似た、気だるさが入ったような掛け合いフロウやソウルそのものの空気感を大切にしたようなサンプリング、バラエティに富んだビートコンダクト、そこから生まれるレイドバック感など、とても聴いていて心地良いです。「Paper Shin」[M-3]、「Ode To Tanya」[M-7]、「Want You To Want」[M-16]あたりが最高。

【試聴】
http://www.hiphopnews.de/news_detail_startseite,94,,28780,detail.html
http://www.undergroundhiphop.com/store/detail.asp?UPC=LMM004LP
http://www.myspace.com/tanyamorgan